池上は、花東縦谷のなかほどにある米の町だ。古い客車の前に立つ駅名の板には、台東まで四十三キロ、花蓮まで百十三キロとあった。
店の大きな窓の向こうに、田んぼと山がそのまま広がっていた。窓辺の席の人は、逆光で輪郭だけになっていた。
九月の稲はまだ青く、穂がそろい始めていた。山の稜線に大きな雲がかかっていた。田んぼのあいだを一本の道がまっすぐ伸び、その先に木が一本立っていた。
日差しが強く、外を歩く人はほとんどいない。大きな木の下にだけ、人が座っていた。三輪の自転車が、電柱の脇をゆっくり通り過ぎていった。丸い枠の向こうに、さっきの木が見えた。
木陰の小道を抜けて駅に戻った。帽子の人が、ベンチから線路の向こうの田んぼを眺めていた。青い車両が入ってきて、車掌が扉の前に立った。走り出すと、窓の外を緑がしばらく流れていった。


